昔から夏になると、「ハチに刺されてショック死」といったニュースが新聞やテレビの片隅で報じられます。ハチにさされて死ぬなんて滅多にないよね・・・とみなさん思いませんか?
しかし!日本では毎年30~40人がハチに刺されたときに起こるアナフィラキシーショックで死亡するとされています。
このアナフィラキシーショックにも、しばしばヒスタミンが関与しているようです。
以前ハチに刺されて、体内にハチ毒に含まれるヒスタミンに対する抗体ができている人は、再度ヒスタミンが体内に入ってくると体が過剰なアレルギー反応を起こし、急激な血圧低下や上気道の浮腫などで呼吸困難となり、死亡することがあるのです。
このような話から想像すると、ヒスタミンは非常に危険な物質のように聞こえますよね。
しかしこれは、アレルギーを持つ人、とりわけ冬から春にかけて花粉症に悩まされる人にとっては日常的な名前でもあります。
この物質が、鼻水や涙、くしゃみ、じんましん、激しいかゆみなどを引き起こす犯人として知られているからです。
たしかに"嫌われる理由のあるヒスタミン"ではあるものの、この物質は本来、重要な役目を持っていることを知っていますか?
それは、この物質が私たちの体内に病原体などが侵入したときに、免疫系の細胞が送り出す危険信号だからです!
ヒスタミンは、あらゆる動植物の生態組織に分布していますが、人間の場合はおもに、白血球の一種の好塩基球や肥満細胞(別名マスト細胞:血球の仲間で組織内を動きまわる性質をもつ)の内部でつくられます。とくに肥満細胞には高濃度で含まれるほか、皮膚や肝臓、肺などの臓器、皮膚下や粘膜下の細い血管の周辺などにも存在します。
私たちの体内に免疫反応を引き起こすスギ花粉のような物質(抗原)が入ってくると、おもに血管周辺の結合組織に存在する肥満細胞がヒスタミンを放出します。
放出されたこの物質は、末梢神経や粘膜、血管内壁などの細胞の表面にあるヒスタミン受容体(H1受容体~H4受容体まで4種類のタンパク質)に結合します。
ヒスタミンが細胞のヒスタミン受容体に結合すると、その細胞は、強力な血管拡張作用を持つ一酸化窒素(NO)を放出します。
一酸化窒素は細い動脈を拡張させますが(ペニスの勃起もこれによって起こります)、他方で細い静脈を収縮させる作用も合わせもつので、結果的に再び血管圧力が上昇して、局所的なむくみ(浮腫)が生じることになります。
こうした反応は、神経の末端や気管支の平滑筋を刺激するため、アレルギーとしてよく知られている、
「かゆい」「くしゃみや咳が出る」「炎症が生じる」
などの症状を引き起こすんですよねー。
また、ヒスタミンが中枢神経(脳)の細胞のヒスタミン受容体と結合すると、頭痛や神経の興奮を引き起こすとされています。
ヒスタミンによるこれらの反応は本来、体が有害な病原体を追い出そうとする自然な作用なんです。
ところが前述のように、免疫系は特に暴走し、病原性を持たない花粉やハウスダストなどに対しても過剰反応するため、多くの人がアレルギー反応に苦しむことになります!
ハチに刺されたり、ある種の食べ物によってアナフィラキシーショックが起こり、死亡することがあるのは、このアレルギー反応がもっとも急速かつ激しく現われた結果ということなんですね。
アレルギーを引き起こす原因(アレルゲン)は個人によってさまざまですよね。
スギやブタクサの花粉、牛乳、青魚、カニやエビなどの甲殻類、室内に漂うダニの死骸、ペットの皮膚や唾液中の成分などなど・・・。
実際にはどんな物質でもそのような反応を引き起こす可能性があります!さらに、冷気や日光が原因となることさえあるのです!
免疫系の過剰反応とは、外から何らかの物質が体内に入ったときに、それが生体に無害なものでも免疫系が有害と認識してしまうということです。
このような反応が生じるのは一般に、その人の免疫系が花粉などの物質を異物(非自己)と認識して抗体をつくってしまう、あるいは抗体をつくりやすい状態になっているためと考えられています。
しかしほかにも、免疫細胞の遺伝子が変異しており、無害の物質に対してまで反応してしまうこともあります。
このような遺伝的変異は、生まれつきの場合も、また後天的に生じる場合も考えられます。そのため、それまで何の問題も起こさなかったサバがあるとき突然激しいじんましんを引き起こし、以後はサバに対してつねにアレルギーが生じるといったことが起こるんですよね。
逆に、それまでエビを食べるたびにアレルギー起こしていた女性が、妊娠・出産を経験した後、同じエビに対して全く異常を起こさなくなるということが起こり得ます。
最近ではヒスタミンには神経伝達物質としての役割があることも明らかになっています。
免疫系はたいへん複雑でデリケートな仕組みであるため、いつでも適切にはたらくとは限りません。
ときとして外部からの刺激に対して過剰反応を示します。
その結果、大して危険でもないはずの花粉などが体内に入っただけで、免疫細胞が大量のヒスタミンを放出し、ときとして生命にかかわるような激しいアレルギー反応を引き起こすのです。
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