皆さんご存知のとおり「Pokemon GO」は、スマートフォンやタブレットのGPS機能を使って、リアル世界の中でポケモンをゲットしたり、プレイヤーと対戦したりすることができる大人気のモバイルゲームです。
アプリを起動させて近くにポケモンが出現すると、スマートフォンがバイブで教えてくれます。
現れたポケモンは、画面上のモンスターボールを投げて捕まえることができます。
この「Pokemon GO」、いつも屋内でゲームをしている人たちが、ポケモンを探しに街中に繰り出すきっかけになっているようで、うつ病を持病に持つプレイヤーからは「薬やカウンセラーのアドバイスよりもうつ病の治療になっている」などのコメントが続出しているようです!
本当にうつ病に効果があるのなら、多くの患者さんに是非プレイしてもらいたいものですよね~。
今回は、誰もがかかる可能性のある「うつ病」について考えてみたいと思います。
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かつてはうつ病は、他のある種の精神疾患と同じように、遺伝的要因によるものと考えられていました。血縁者にそのような傾向がみられる人は、うつ病を発症する確率が高いとされていたのです。
しかし、1950年代はじめにアメリカで、これが遺伝すなわち生まれながらの体質や気質によるものではなく、また環境からのストレスが原因で発症するものでもないとする見方が生まれました。
そして、うつ病の正体は、脳の神経生理学的な病気だとされるようになったのです!
このような見方が生まれたきっかけは、多数の高血圧の人や結核患者が示したある顕著な症状でした。
治療のために長い間血圧降下剤を使用している人が重いうつ病を発症する、あるいは結核の治療薬を使用した人のうつ症状が軽くなるという報告が、多くの医療機関などから報告されたのです。
そして、血圧降下剤や結核治療薬に含まれる成分が脳に作用して、うつ症状を引き起こしたり、逆に改善したりするのではないかとする見方が強まったのです!このとき、うつ病の原因物質として浮上したのが「モノアミン類」でした。というのも、血圧降下剤が脳内のモノアミンを減少させ、他方、結核の治療薬はモノアミンの分解を防ぐように作用することがわかったからです。
そこで、うつ病は脳内のものモノアミン類が減少すると発症するのではないかとする学説が出され、これは以後「モノアミン学説」と呼ばれ、うつ病のしくみを説明するものとして専門家たちの間にも定着することになります。
アミンは、アンモニアに似たアミノ基を持つ化合物で、さまざまな種類があります。なかでも脳内の情報伝達物質である単一のアミノ基を持つ化合物はモノアミンと呼ばれます。モノアミンにも多くの種類があるため、当時の研究所はどれがうつ病の犯人かを見つけようと動物実験による探索に没頭しました。そしてついに突き止めたのが、セロトニンとノルアドレナリン(ノルンエピネフリン)でした!
これらの物質は、脳の神経細胞であるニューロンどうしが接続している部位(シナプス)の狭いすきまに、一方から放出されて他方が受け取ることによって脳が送り出す情報を伝達します。もしこれらの物質の放出が不足する、またはいちど放出された物質がもとの神経細胞に吸収されるためにやはり不足してうつ病が引き起こされるなら、単純な論理的帰結として、これらの物質を外部から十分に供給すれば、うつ病は治るはずですよね。
こうして1950年代末には、最初のうつ病治療薬としての「三環系抗うつ剤」が次々に合成され、製品化されました。
三環系とは、分子構造の中に3つの環状の構造が含まれるという意味です。
実際これらの抗うつ剤は、脳内のセロトニンの働きを高めることが確認され、治療に用いられるようになりました。
セロトニンは、体内では合成されない必須アミノ酸のひとつトリプトファンが脳内で代謝されるときに生成される物質で、"ワンダードラッグ(驚異の薬)"と呼ばれるように、私たちの心や体に非常に広範な作用を及ぼします。
いまでは、脳内のセロトニンが増えたり減ったりすると、食欲や睡眠、記憶、体温制御、気分、行動、心臓血管のはたらき、筋肉や血管の収縮、内分泌腺の活動などが影響を受け、さらにうつ病にも深く関わっていることが明らかになっています。
またセロトニンは、脳の神経細胞(ニューロン)から放出されると、シナプスの間隙を渡って、隣の神経細胞のレセプター(受容体)に取り込まれます。
これによって、情報がひとつの神経細胞から次の神経細胞へと伝わります。
しかし放出されたすべてのセロトニンが隣の神経細胞のレセプターに取り込まれるのではなく、かなりの部分が元の神経細胞のレセプターへと「再吸収」されてしまいます。
このとき、もし再吸収が過剰に起これば、セロトニンには不足状態となり、それが心や体のはたらきにさまざまな影響を引き起こすことになります。
話が横道にそれるものの、麻薬の一種であるLSDは、その構造がセロトニンに非常によく似ているため、LSDが脳内に入ると、神経細胞のレセプターはLSDをセロトニンと勘違いして受け取ってしまいます。
こうなるとセロトニンの正常な情報が伝わらなくなるため、脳が情報の混乱を引き起こし、現実世界とはかけ離れたサイケデリックな色彩や強い幻覚を見るなどの症状が現われることになります。
あーだこーだと言いましたが、冒頭の「Pokemon GO」にはアニマルセラピー的な要素もあり、科学的な観点からも、うつ病に対する有用性が確認できれば、治療に取り入れる医療機関が出てくるかもしれません!
歩きスマホを助長するとして、悪者扱いされている昨今、うつ病の治療というプラスの側面が大きくクローズアップされることを期待してもいいかもしれませんね。
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