ボクは調剤薬局を経営していますので、これまでできるだけポジショントークを控えてきました。
あくまで客観的、合理的な意見を中心に述べてきたつもりです。
でも今日は、調剤薬局経営者として多少、ポジショントーク。我田引水的な発言があるかもしれません。ご容赦下さい。
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まずは、11月30日付 読売新聞の記事
「300億円、薬剤師狙い撃ち 診療報酬マイナス改定へ」
このニュースに限らず、もう「調剤報酬はマイナス改定して当たり前」なスタンスのニュース記事が毎日配信されてますね。
今日のブログは長いですよ~!!あ、いっつもか?(笑)
覚悟してください!!
とかく風当たりの強い調剤薬局、特に大きな病院の門前薬局ですね。
日本調剤の三津原社長の年収が世間の心証を悪くしている原因のひとつかもしれませんね。
■「財政は赤字なのに医療でお金稼いで、某社長は高い報酬取れるなんて、きっと調剤薬局は儲け過ぎに違いない!!」
■「そういえば、どこの大きな病院の前にも同じような調剤薬局が乱立してる。きっとオイシイ思いしてるに違いない!」
■「どうも診療報酬の本体部分に占める調剤技術料の伸びが大きいらしいぞ!もっと締め付けろ!!」みたいな・・・。
でもね、冷静に一緒に考えてみてください。
ひとつずつ解説しますよ。
三津原社長の年収って、今年、7億1千5百万円でしたけど、純粋に調剤薬局からの報酬って年間5億円くらいです。
皆さん、日本調剤薬局の店舗数ってご存知ですか?
2015年12月1日現在で526店舗。従業員数3283人です。
つまり、社長は薬局1店舗あたり、年間95万円、月額7万9千円しか抜いていないわけです。(個別の店舗から社長の財布に流れていく金額です)
たった7万9千円ですよ。(税率が高いので税金引かれたら4万円に満たないです)
薬剤師としてお勤めの方で、もし自分が社長だったと仮定して、他人(部下や右腕的な人)に自分の調剤薬局を完全に任せて毎月どれくらいの権利収入欲しいですか?
「月7万9千円しかもらえないんだったら、手間ばっかりかかって責任重いからやめとくわ」って意見が大半だと思います。
もちろん開局に際して、皆さん名義で借金して、お店がつぶれたら皆さんが全額返済するんですよ。
ボクなら、最低月20万円は欲しいですね。何もしなくてもです。
もし、たった7万9千円(手取りで4万円弱)でも医療を食い物にしてるという方がいます?
常識で考えて、「それくらいはしょうがないね」という感じになりませんかね?
話しは少しそれますが、調剤薬局のフランチャイズ店を展開する親会社は、ロイヤリティーとして「売上」の3%吸い上げてますから、もっとケシカランということになりますね。
ましてや任せたはずの店舗に多少応援に行ったり、顔出したり、諸々のトラブルの火消しなんかに出て行かないと店舗が回らないなら、月50万円は欲しいですね。
しかも、これ月処方せん枚数700枚~1000枚くらいの小さな店舗でさえです。
大手門前のように月間4000枚を越えるような、メガ門前薬局なんか、月100万円くらい抜かせろ!!って話です。
こうやって考えると三津原社長は決して法外な報酬を取ってるとは思えないですけどね。
しかも税金で半分は持っていかれます。日本の税制は金持ちには懲罰的な仕打ちをします。よくあんだけ税金取られてモチベーションが保てるな~と逆に尊敬します。(しかも、世間にボロクソ言われて・・・)
皆さんもこういう風に考えると数字に現実味が出てくるんじゃないでしょうか?
しかも3283人の雇用を生み出してるんですよ!!
ボクも吹けば飛ぶような会社を経営して、人を雇用してるのでその難しさと重責が身にしみます。
マジで負ってる責任のこと考えると不安で眠れない夜もあります。
3千人以上の雇用を生み出すなんて、メチャクチャ社会に貢献してるじゃないですか!!
参考ブログ:日本調剤の社長の年収は安い!?
日本調剤、三津原社長の年収(2015年度版)
あと、「大きな病院の前に調剤薬局が乱立してるから、オイシイ思いをしているに違いない的な考え方?」
結局、大きな病院前がオイシイから乱立してるんじゃなくて、そこそこの規模の調剤薬局チェーンが
出店できる(利益を見込める)場所って、大きな病院の門前しかないんですよ。
以前もコラムで書きましたけど、会社って永続的に利益を出して存続していかなくてはダメなんです。
(企業とはゴーイングコンサーンである)
個人の開業医の門前なんて、規模の問題は別にしても、危なかしくって出店できませんよ。
だって、お医者さん死んだら終わりだもん。
大きな病院で流行っているところなら、何十年先でも病院は存続していきます。(中で働いてるお医者さんやスタッフ、来ている患者さんが変遷しても病院は存続します。)
結局、大きな会社って融資を引いて、事業を拡大して、社会に貢献して、お金を返済しながらもプラスのキャッシュフローを得ないといけない。
その間、人を採用して育てて、お給料払って退職まで面倒をみる。
そのビジネススタイルに適合した適切な出店場所って大きな病院の門前しかないんですよ。
企業の寿命は、個々人の医者や薬剤師、患者のそれよりもずっと長いということです。
だから、大手はしのぎを削って、同じ様な場所に出店攻勢をかける。傍目には甘い汁に群がって乱立しているように見えるんでしょうね。
でも違いますね。会社の将来を考えて、出店先を篩いにかけたら答えは自ずと限られてきます。経営者は生き残りに必死です。
そこが儲かるからというより、経営効率と企業のビジネススタイルの問題です。
しかもこの規模の門前は調剤基本料が25点に抑えられているので、経営は非常にしんどいですよ。
大手調剤薬局チェーンの肩を持つわけではありませんけど、何故、集中率が70%超えて、受付回数が4000回超なら、調剤基本料が25点に減るのかボクにはさっぱりわかりませんね。
これちゃんと答えられる人、いないんじゃないですかね?
「儲かってそうだから」とか「経営効率がよさそうだから」とかは理由になりませんよ。それを理由に点数に傾斜を掛けるなら完全に社会主義経済になってしまいます。
僕、大手調剤薬局で勤務したことありますけど、大手が一番、社員教育やサービスきちんとしていますよ。
最後に「診療報酬の本体部分に占める調剤技術料の伸びが大きい」とのもっともらしい意見ですが・・。
冷静に考えて、そりゃ、伸びは大きくなりますよ。
だって医薬分業がものすごく進んだんだもん。パイがデカくなったんだから、物理的に伸びなきゃおかしいでしょうよっ!!
そもそも薬剤費も含めて、調剤薬局の報酬が大きいなんて無茶苦茶な解説してる資料も見かけますもんね(悪意があるとしか言えません)
医薬分業で業界の規模が10倍になれば、そりゃ調剤技術料の伸びも相応に大きくなってしかるべきです。
そもそも莫大な診療報酬を得ていた「医科」が長い年月をかけてチビチビ削られて今の状態にある「医科」と、歴史が浅くしかも制度開始時からの技術料が元々少ない「調剤」を比較すると、「医科」はまだまだ余裕があるな~というのが実感です。
過去にブログで書きましたが、診療報酬改定のたびに「医科」には「甘いアメ」と「あまり甘くないアメ」を提供し、
「調剤」には「あまり甘くないアメ」と「ムチ」の選択を迫りました。
それを裏付ける資料があります。
この資料見てください。はっきり言って、僕、統計資料マニアです。(笑)
平成26年1月に中央社会保険医療協議会診療調査組織が財務省に提出した資料の4ページ目「診療報酬制度について」です。 見えにくいのでココから資料を表示できます。
診療報酬全体の中で「医科」、「歯科」、「調剤」の技術料が占める割合を計算すると
「医科」75%×0.8=60%
「歯科」7%×0.9=6.3%
「調剤」18%×0.3=5.4%
と、「医科」の技術料が圧倒的に多く、医療費の60%を医科の「技術料」が占めていることがわかります。
さらに診療報酬本体部分のみをベースに計算しなおすと「医科」、「歯科」、「調剤」への分配率は
「医科」83.6%、「歯科」8.7%「調剤」7.7%
です。
何ですか?これ?(笑)
「医科」が散々食い散らかした後の残飯を「歯科」と「調剤」で分け合って食べてるお寒い現状が浮かんできます。
もちろん「医科」がお金がかかることはわかりますよ。でもちょっとひどくないですか?
これだけ大げさに調剤報酬の伸びが大きすぎると吹聴されて、「調剤」の技術料が全技術料(診療報酬本体部分)に占める割合はたった7.7%のみです。
これをこれ以上削ってどうする?
結局、政府が組織力とお金のある日本医師会の圧力に屈した結果がこれです。一言で言い表すと政治屋の「選挙対策」の成れの果てが、今の惨状です。
※政治屋(選挙で当選することを主な目的とする破廉恥な輩。類似語:政治家 自己の利益を考慮せず、天下国家のことを慮り、政治を行う人のこと)
マスゴミの方も大衆に迎合した記事を雰囲気で書くのではなく、こういったファクトをベースに記事を書いて欲しいものです。
もっと腹立たしいのは、薬剤師会や薬剤師議員ですね。手間ばかりかかる、しょーもないアンケート送ってきたり、議員を応援する署名を強要したり。
そんな暇あるならもっと真面目に仕事しろ!!役立たずっ!!
何が「藤井も○ゆ○物語」だよっ!!(苦笑)
でも時すでに遅く、国民の「調剤は儲け過ぎ」という誤解がほぼ定着していると思います。
どう考えても本気で医療費削減を実行し、しかも医療の提供者側の技術料を削減をするのであれば、まず「医科」の診療報酬本体を大きく削減するのが、合理的かつ適切なんじゃないでしょうか?
例えば、最近、日本医師会が正式に反対を表明した「リフィル処方制度」
病院行って「お薬だけの方はこっちに診察券入れてください」って堂々と受付の人に言われますもんね。
いや、そもそも診察なしで投薬あるいは処方発行するって違法行為でしょ?診察もしないでどうしてお薬出せるの?
ん!? これがアリなら、リフィル処方で何も問題ないんじゃん!!
そもそも、何も診察せずに処方せん発行するのと、曲がりなりにも薬剤師がその都度、患者の容態を確認して投薬するのと患者にとってどっちがいい?
しかも患者は病院に行く必要もないし、診察代もかからない。
患者にメリットこそあれ、デメリットは何もないですよ。
とすると、現状でリフィル処方に反対するのは理屈が通らないでしょ?
ましてや「患者のため」なんて、大嘘つくのやめたらどうですかね?
医師会はリフィル処方の反対の本音を堂々と言ってみればどうでしょうか?
「いや~、リフィル処方になったら再診料も処方料も算定できないから儲けが減るやん!だから絶対反対ですわ・・・」と。
過去、院内薬局について書いたブログ記事
でも書きましたが、一度国民にアンケート取ってみたらどうですかね?
「日本では医師会の反対でリフィル処方が導入できません。症状が安定していれば病院に行くことなしに薬局へ行ってお薬がもらえますよ~。もう診察もしないのに診察代と処方料を請求してくるお医者さんとはオサラバですよ」と・・・・。
おそらくほぼ100%の国民が「リフィル処方制度」の導入を望むでしょう。
しかも、これによって強引な理屈で調剤薬局のなけなしの技術料を削るより、はるかに大きな診療報酬本体部分の削減が出来るはずです。
なんせ医科が診療報酬全体の83.6%も貪ってるんだから。
この件に限らず、日本医師会はちょっと頭冷やした方がいいです。
「自己の権益を守るためなら、何やってもいい」という魂胆がミエミエです。
しかも、「患者のために」という思ってもいないポーズや詭弁が多すぎます。
一言で言うと、日本医師会って破廉恥ですね。
参考記事:TPPと医療(国民皆保険制度の崩壊?)
調剤薬局の台所って火の車ですよ。
大手はサービス残業が常態化してますし、小さな薬局で薬剤師が少ないところは有給休暇なんて満足に取れませんよ。仕事中、トイレもゆっくり行けません。
それどころか病気で休むことすらできません。
産休や育休なんて夢の国の話。
それで平均年収が500万円程度です。
そこそこ大学受験レベルの高い薬学部でて、6年間必死に勉強して、国家試験に受かって、薬剤師という専門職をもった人間の平均年収が500万くらいですよ。
おかしくないですかね?
先進国の薬剤師の平均年収って10万ドルくらいが相場です。
まあ、年収1000万円くらいですね。平均的なサラリーマンよりかなり高額所得者というのが「常識」だと思います。
サービス残業なんてもちろんないですよ。
僕の感覚でも、日本で薬剤師の年収ってやっぱり40代くらいになれば年収1000万くらいもらえるような制度設計にしないとダメだと思います。
参考記事:「薬剤師の年収はいくらが理想か?その1」
「薬剤師の年収はいくらが理想か?その2」
今、政府は労働者の賃金を上げる方向で民間に指示を出していますが、調剤薬局に勤務する薬剤師ももちろん「労働者」です。
そのお給料は調剤技術料から捻出されます。それ以外からはお金は供給されません。
で、この調剤技術料を削減するって・・・・。
素朴な疑問として、調剤薬局は賃金の上昇分や勤続年数増加に伴う昇給分のお金をどうやって捻出したらいいんでしょうか?
調剤薬局をはじめとする保険医療機関はすべからく、診療報酬本体部分(技術料)しか、収益の源泉がありません。
紛れもない事実です。
じゃ、調剤技術料を2%下げたら、元々世界標準の半分程度の勤務薬剤師の年収をさらに2%削ってもいいよというお話になります。
もちろん政府は文句言いませんよね?
言ってることとやってることが全くチグハグですよね。
僕はモノやサービスには適正な値段があると思います。
今、調剤薬局に要求されているサービスの内容を見ると、「こんなにも細やかなサービスを、こんなハシタ金で患者に提供しろって言うつもりなの?」的なものが多いです。
現状でも調剤報酬と要求されてる労働内容が全く合っていないと思います。
参考記事:
「調剤薬局は儲け過ぎ!?」
「2014年度診療報酬改定に思うこと(その2)」
「今さらですが、薬歴未記載問題」
皆さんもそう思いませんか?
次回以降はもう少し調剤薬局オーナーとしてのポジショントーク!?と医療サービスの受給者側のサービス削減による、医療費削減について書いてみたいと思います。
以上、調剤薬局経営者の勝手なポジショントークでした。