最近、ニュースで診療報酬という言葉をやたら聞くのは気のせいでしょうか?
まあ、医療費や社会保障費の際限のない膨張と診療報酬改定を来春に控えた時期ですので、
不思議なことではありませんね。
最近、診療報酬にからむ事件で気になったニュースでコラムを書きます。
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皆さんは日本の国民医療費の総額っていくらかご存知ですか?
ざっくり40兆円です。しかも毎年うなぎのぼりで増え続けています。
まあ、これだけ大きなお金が動く産業(民間・官公立含め)は他にはないので、当然不正の温床になりやすいです。
直近では暴力団が病院・接骨院と患者を両方とも用意して、診療報酬を不正請求していた事件がありました。
僕は以前から言い続けていますが、医療は風通しが悪くてブラックボックス化しやすい業界なんです。
近年では、医療機関にかかると被保険者の住所に定期的に「こんな医療機関を受診して、いくら医療費がかかりました~」
みたいな葉書が来ます。
なので、医療機関が不正を働くと患者の方で「あれれ?こんなに受診してないけどな~」ということになり、レセプトの不正請求は発覚しやすくなります。
もちろん、不正請求の抑止力を働かせるための制度です。
医療機関と調剤薬局のレセプトの突合チェックもここ数年で本格化してきましたね。
昔はこの制度なかったんです。
だから、開業医は無茶苦茶してました。
やってない治療をやったことにしてレセプト請求しても、ブラックボックスなんで誰にもバレないし、調べようもないですもんね。
戦後、開業医の経済的成功を見れば、さもありなんという感じです。
今回のお話とはちょっと外れますが、「何ゆえ医薬分業が日本で行われるようになったか?」の答えは
ココですよね。
以前のコラムでも書きましたので、是非チェックしてみて下さい。
参考コラム:「医薬分業してよかったのか?その1」
「今さら「かかりつけ薬局」?」
患者の利便性を上げたりするのが「医薬分業」の本質ではないと断言しておきます。
要は不正の温床に光を当てるために作った装置こそが、「医薬分業」なわけです。
そしてその意味では、医薬分業は成功したと思います。
今、全然的外れな「医薬分業のメリット」みたいな議論がなされていますが、根本的に
間違っていると思います。
なぜ、医薬分業をすることになったのかを、国民はもう一度思い出してみるといいですよ。
あまりにもアンタッチャブルな世界がそこにあったがゆえに、医薬分業は推進されてきたんです。
ところで、今回の不正請求事件のすごいところは、暴力団が医療機関と患者の両方を丸め込んでこの詐欺を組織的に行った点です。
しかも国保の患者を使って。(政府管掌もそうですが、06の社保なんかは非常に請求にウルサイですから)
まあ、悪事を働くほうもなかなか下調べが周到です。
詐欺の構造はこうです。
事前に医療機関、接骨院と結託。
暴:「こっちで患者集めてきますから、どんどん架空レセプト請求して下さい。儲かった金の一部は報酬として渡します。」
医療機関・接骨院:「儲かりそうですな~。ウヘヘ」
次に謝礼を払って患者役(国民健康保険被保険者)を集めてきて
暴:「みんな、何もしなくても謝礼あげるから、保険証貸してな~。こっちで勝手に病気にしといて、治療したことにするわ~。」
患者役:「え~、謝礼もらえるんですか~!どうぞどうぞ」
まあ、簡単に書くとこんな感じです。
するとあら不思議!
鉛筆ナメナメして、レセプト出したら無制限にお金が数ヵ月後に口座に振り込まれます。
院内投薬を装った、不正請求なんか強烈ですよ。
だって、投薬せずに糖尿病の治療薬を投薬したことにすれば、投薬していない薬剤費丸ごと銀行口座に振り込まれるんですから・・・。
薬剤師なら糖尿患者に使用される薬がどれだけ高価かわかりますよね?
先発医薬品を数種類、DPP4製剤やベイスン、キネダックなんか適当に架空請求しとけば、1回ですぐに数万円のお金がチャリンと出てきます。
原価タダです。利益率ほぼ100%。これを数百人単位でやったら月1000万くらい軽いです。
しかも、この事件は接骨院も含まれてるんですが、なんとこの接骨院、この詐欺を行うためだけに開院させたみたいなんですよ。
いや~、先行投資に余念がなく、儲けに対して徹底してるな~・・(って感心してる場合じゃないんですけどね)
まあ、開業医の診療報酬詐欺なんてこれまでもいくらでもありましたし(きっぱり)、今でもあると思います。
また生活保護受給者を囲い込んだ病院(開業医)主体の貧困ビジネスも横行してますしね。
今回、異質だったのは、開業医が主体にならず、暴力団が「絵を描いた」ということです。
まあ、動くお金の大きさと医療の閉鎖性を考えると、今後も起こりえる犯罪だと思います。
また最近ちょっとニュースに出た「レセプト債」の破綻のニュースについても僕は相当怪しいと思ってます。
世の中にある債権(お金を支払ってもらう権利)って、何でも証券化できるんです。
これ、英語でsecuritization(セキュリタイゼーション)って言うんですが、今回はレセプトをセキュリタイズしたもの。つまりレセプト債です。
ちなみに、米国で2007年のサブプライムショックの際に問題になったのが、サブプライムローンをセキュリタイズしたものです。
で、病院などが国保連合会や社保基金にレセプト請求しますよね?すると数ヵ月後に口座にレセプト入金があります。
その入金されるお金を原資に証券化したものが「レセプト債」です。
何故、このレセプト債なるものが世の中に存在するか?
例えば、20億円のレセプト請求をした病院があるとします。しかし病院はレセプト入金までに待てずにお金を必要としているとします。
まあ、有名な病院でも自転車操業の病院とかザラにあります。
そこに、レセプト債権を起債する会社(今仮にR社とします)が現れて、「ではその20億円のレセプト請求権をウチが16億円で買い取りましょう」ともちかけます。
で、R社は20億円のレセプト請求権を担保に16億円を病院側に用立てます。
前後してこの融通した16億円分を小口債券化します。(多くの投資家に販売するためです。)
そして完成したレセプト債を販売します。20億円分のレセプト請求権を担保にした債権ですのでABS(アセットバックセキュリティ)とも言えます。
薬剤師の方はおわかりかと思いますが、レセプトは非常に安全なものです。数ヵ月後には必ず請求分が銀行口座に振り込まれます。
よって、このレセプトを原資産にしたレセプト債も非常に安全なものです。
16億円を投資家から調達して、20億円を手に入れれば、元本と投資家への金利(配当)を差し引いても数ヶ月で4億円弱の儲けになります。
「すぐにお金が必要な必要な病院」、「債券を買い取り、レセプト債を起債するファクタリング会社」、「高利回りを得られる投資家」にとって「三方一両得」なお話です。
投資家に対して高利回りと書きましたが、このレセプトは非常にリスクが少ないので、利率は3%程度だったみたいですね。
銀行の定期預金の利率を考えると非常に高利回りですが・・・。
これがレセプト債の簡単な説明です。
で、債券の構造上どこにもリスクがなさそうなレセプト債ですが、実際には破綻しました。(笑)
どこに問題があったか?
まだニュースなどで報道されていないので、あくまで僕の推測ですが・・・。
ズバリ医療機関のレセプト請求内容が腐っていた。つまり不正があったのではないかと感じてします。
つまり、やってもいない治療や投薬をレセプト請求して、それが発覚。当然、その分のレセプトは支払われません。
そのレセプト請求権を原資にした証券も紙切れになります。
僕の予想が当たっていれば、これは刑事事件に発展すると思います。
レセプト債の発行残高が227億円もありますので、結構大きな経済事件になるかもですね。
僕の興味は「誰がこの絵を描いたか?」です。
不正請求をして、しかもそのレセプト請求権を買い取って証券化してレセプト債を販売した会社が破綻。
投資家がババを引く。
これ、全員(投資家以外)がグルな気がしています。
ここまで大きな絵が描けるのは、素人じゃないですね。きっと。
いずれ、報道ではっきりすると思います。
乞うご期待!!(って、楽しんでる場合じゃないですよ!!)