結局、上位5社のうち3社が本業で調剤薬局を経営していることがわかりました。ファルマスタッフを運営する日本調剤、薬剤師転職ドットコムを運営するアインファーマシーズ、薬剤師プロを運営する総合メディカル(そうごう薬局)です。
これら3社は調剤薬局を本業で経営しており、しかも3社とも東証1部上場企業だということですね。
自分が調剤薬局を経営していて思うのは、やはり薬剤師を実際に雇用したノウハウを持って、薬剤師転職ビジネスを行うのは非常に有利であるということです。
どんな商売でもそうですが、「自分の勝手知った分野」というものがあります。
結構、別領域の会社やベンチャー企業が薬剤師転職ビジネスの旨み(薬剤師一人を正社員で紹介して、「ハイ!150万円頂きます!!」みたいな世界です)に惹かれて乗り込んで来ましたが結局、頓挫して撤退した状況がここ数年の傾向です。
薬剤師の目から見ても、「あ~、この会社はあの調剤薬局チェーンと一緒の会社なんだ~」というのがわかれば多少親近感が湧くと思います。
逆に、どこからともなく出てきて「薬剤師転職サイトですぅ。登録して下さい。何なら転職お祝い金も出しましょうか?」みたいな会社にはちょっと関わりたくないですもんね。(笑)
僕たち調剤薬局経営者にしても、今まで別の事業展開してた会社に薬剤師を集めてこれるとは到底思えないですもん。
1位のリクナビ薬剤師に代表される、本業がゴリゴリの転職ビジネス集団も強いですね。今回ランキングから外れてますが、「マイナビ薬剤師」なんかもそうです。
でも何と言ってもリクルートですね。リクルート事件でケチがついてしまいましたが、リクルートというブランドは就職・転職・派遣・アルバイトにおいては未だ圧倒的なパワーを持っています。
先ほど「どんな商売も自分の勝手知った分野がある」と書きましたが、リクルートにとって薬剤師だろうがなんだろうが、就職や転職は「自分の勝手知った」専門分野なんです。
だから強い。
しかもお金持ち。メディアへの露出も半端ないでしょ?
薬剤師の皆さんなら日経DIをよくご存知だと思いますが、あれ1回広告出すのにどれくらい費用がかかると思います?
リクナビさんは1ページカラーで出してますよね?あれで1回100万円くらいです。見開きで200万円くらいになります。
もちろん日経DIだけじゃないですからね。新聞広告や雑誌、インターネット上ではリクナビ薬剤師さんのPR広告が踊ってます。月に軽く億円単位の広告は出してるはずです。
広告ってもちろんペイする(利益が出る)から出稿するんですが、ある一定の閾値を越えるまでは赤字なんです。
しかも過当競争が激しい業界では、黒字にするために膨大な赤字を垂れ流さないとダメなんです。いわゆる消耗戦ですね。
今の薬剤師転職ビジネスがまさにその状況です。黒字になるまでに持ちこたえれずに撤退した会社がいくつもあります。
その代わり、いったん黒字に転換すると他が倒れてくれてるので後はどんどん強くなっていきます。
誰もが知ってる会社に薬剤師が押し寄せ、それを見た求人企業も押し寄せる。だから消耗戦を生き残れるだけの潤沢なキャッシュを持った会社が有利なんです。
つまりリクルートのような会社です。
皆さん、例えばちょっと贅沢なこだわりの文房具が欲しいと思ったら、イオンの文房具コーナーに行きますか?
僕なら大きな文房具屋さんに行きます。
なぜか?
確かにイオンの文房具コーナーに行けば、何がしかお目当ての機能を持った文房具を買うことは可能でしょう。でもどうしても欲しいと思えるものはないでしょう。
相談もできないし、そもそも文房具について本当に詳しく知ってる店員さんはいないからです。もちろん品揃えも文房具専門店とはレベルが違います。
さて、この専門(特化している)というのは非常に重要なんです。
何かに特化しているということは、少なくともその分野においては突き抜けた知識や他では手に入らない情報を持っているということです。たとえ規模は小さくてもです。
薬剤師の転職を例にとれば、本当の意味で薬剤師の転職だけを扱ってる会社って多くないんです。
ちょっと調べればわかりますが、表向き「薬剤師専門」と謳っていても、実際は同じオフィス(住所を見てください)で「医師の転職」や「看護師の転職」を別サービス名、別サイトで運営してる会社って多いんです。下手すりゃ違う分野を一人のコーディネータが掛け持ちなんてことも多々。
その点、アプロドットコムのような会社は純粋に「薬剤師転職ビジネス」しかやってないんです。しかも1998年からずっと16年間も同じことばっかりやってるんですよ。ファルマスタッフなんかも薬剤師の転職事業だけをやってる独立した会社です。
はっきり言ってリクルートみたいな大きな会社からするとハナクソみたいな会社ですよ。(あ、すいません。資本力と言う意味ですよ)
ただちょっと贅沢な文房具を買うときにイオンの文房具コーナーに行くのではなく、文房具屋さんに行くという当たり前の行動原理と同じものがこの薬剤師転職ビジネスにも当てはまります。
僕、ずっと考えていたんです。なぜ、アプロドットコムが6万3千件という求人案件で3年連続薬剤師求人数日本一になり、ファルマスタッフが5万件を越える求人数を持っているのか?
(リクナビ薬剤師といえども3万5千件なんですよ)
それは長い期間、一途に真摯な態度で薬剤師転職ビジネスだけに特化して事業を行ってきた証みたいなもんじゃないかと・・。
わき目もふらず、「これだけやってきた!!」という強さや自信、信頼感が薬剤師を惹き付け、引いては薬剤師求人企業を惹きつけてるのではないかと・・。
資本力の大きな会社は、いわば100Wの電球です。すごく明るい。でもアプロドットコムのような特化型の会社は500mWのレーザービームのようなものです。
100Wの電球を見ても眩しいくらいですが、500mWのレーザーが目にはいればおそらく失明します。それくらい集中(特化)すると強力なんです。
だからこそ、規模の大きな会社を差し置いて堂々ランクインしているのではないかと・・。ちょっと尊敬します。
今回ランキングを見直してみて、上記のような感想を持ちました。
short run(短期)では、誤魔化しが効きます。
しかし、long run(長期的)では、誤魔化しは効きません。
結局、信用とか信頼というものは長い時間をかけて築いていくもので、一足飛びには手に入らないものなんだな~と。
地べた這うような地道な努力も必要です。
この薬剤師転職ビジネスも乱立気味ですが、メッキはすぐにはがれます。結局、本物しか生き残れない。まがい物はじきに淘汰されていくと思います。