日本調剤が「医療用医薬品のメールオーダーサービス」に乗り出すみたいですね。実は、僕が医療業界のニュースに日々接していて、
このニュースがここ数年で最もインパクトのあったニュースです。
というのは、このビジネスモデル、僕がやりたかったんですよ。もちろん資本的に無理なんですけどね・・・。
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今、OTCの方のネット販売が世間を騒がせていますが、ビジネスモデルとしては、調剤のメールオーダーサービスが最も優れていると思います。
理由はOTCの方は、仮に全面解禁になったら、競争が激化して結局価格競争に陥るからです。所謂、レッドオーシャンですね。利益がどんどん減少して、体力消耗戦になってしまうでしょう。
僕は過去のコラムでOTCのネット販売の最終的は勝者は、楽天でもなく、ケンコーコムでもなく既存のドラッグストアでもないズバリ「Amazon」だと予想しました。医薬品とは言え、パッケージモノ(工業製品)の流通にかけては世界広しといえども「Amazon」に勝てる企業はありません。
でも、医療用医薬品のメールオーダーサービスということになると誰でも参入できないんですよ。
そもそも調剤薬局を所有していないと参入できない。加えてかなりノウハウの蓄積が必要なんです。世界最強のAmazonといえども「じゃあ、やってみっか~!」とは行かないわけです。
それと余談になりますが、今回、医療用医薬品のネット販売に関するお話ですので、もうひとつ言及しておきたいビジネスモデルがあります。
それは、「医療用医薬品の個人輸入代行」です。
バイアグラ、プロペシア、避妊用ピルなど日本では自費診療で処方される処方薬以外にも、普通にアレグラみたいな治療用医薬品も普通に処方せんなしで個人輸入で買えます。
法律的も個人が自分の分を適切な量、輸入するのは法律上もOKです。ただ、これは日本国内の業者が輸入して販売を行うことは違法ですね。あくまで個人の「輸入代行お手伝い業」が建前です。しかも、どの会社も住所は海外ですし、どうも怪しげな会社が多そうです。上場企業がここに手を出すのは、不可能だと思います。
ちょっと話がそれましたが、最後に紹介するのが、この「医療用医薬品の郵送サービス」です。最近、突然出てきたビジネスモデルのようですが、実はそうではありません。
僕がこのビジネスモデルを知ったのは、もう20年くらい前です。当時、僕は海外のドラッグストアチェーンの研究をしていたんです。
その過程で見つけたんですが、アメリカにWalgreen(ウォルグリーン)というドラッグストアチェーンがあって、そこが処方せんのメールオーダー調剤を行っていたんです。ちなみにこのウォルグリーン、2009年の売上高が6兆7千億円、純利益で2100億円という強烈に強い会社です。(1ドル100円で換算)当時はメールオーダーサービスの収益は全体のうち10%以内だった記憶してますが、現在メールオーダーサービスの収益がこの会社の大きな柱になっています。
そんなアメリカの状況を見て、当時、規制の多い日本では無理かもしれないけどビジネスとして面白そうだな~と感じました。
時代は流れて、やはりというか厚生労働省からストップがかかってるとはいえ、日本調剤の三津原社長もなかなかやるな~っ!!って感じです。さすが高給取り!!
厚生労働省からのGOサインが出るかどうかは微妙ですが、もし許可されれば薬剤師をとりまく環境は、TPPどころの騒ぎではなくなると思います。
ところで、医療用医薬品のメールオーダーサービスを簡単に説明すると、病院で処方せんをもらいますよね。で、普通は門前薬局に行く。
しかしメールオーダーサービスは、あらかじめ必要書類(専用封筒や問診表など必要書類)を用意しておけば、それと一緒に処方せんをいれて、ポストに投函。数日後に家に薬が届くという仕組みです。
急性疾患の場合は無理ですけど、慢性疾患でもう何年も同じ薬をもらっている人にとっては便利ですよね?しかも薬剤服用歴管理指導料41点分の算定もないので、薬代も若干安くなります。
今、日本調剤は全国にある既存500弱の薬局店舗を、このメールオーダーサービスの拠点にする予定ですが、三津原社長が最終的にどうしたいと思ってるか僕が予想しましょうか?と言っても、僕ならこうするだろうな~という案ですよ。
まず、メールオーダーサービスをするには、前提として薬局と保険調剤の許可が必要です。そこで僕ならメールオーダーサービスを行う専門の調剤薬局を新規に開設します。既存薬局とは戦略が異なるので、きっちり切り分けた方がいいでしょう。(おそらく日本調剤も最終的にはこの方向で攻めてくると思います)
薬局を作ると言っても、窓口で患者さんを受け入れると手間がかかるので、許可申請のためだけに形だけのタバコ屋みたいな、やる気のない薬局入り口を作って、一応一般の患者さんもOKみたいなポーズをとっておきます。開局時間も最小限。
それで薬局受付の奥には最新鋭の「24時間稼動メールオーダー専用調剤工場」を作ってしまう。
調剤室が500坪くらい。バックヤード(倉庫)兼、納品・出荷ドックが1000坪くらい。もちろん表向き、処方せんが来たら普通に調剤しますよ。
場所は一般の患者さんが絶対に来ないようなめっちゃ不便な場所。と言っても、高速道路のICに近い交通の要所の近く。
できればクロネコヤマトの集配センターの隣。初期投資を抑えるためにクロネコヤマトの集配センターの敷地を賃借できればベストですね。これはロジスティックス(配送)を限界まで効率化するためです。
今回、日本調剤は日本郵便と業務提携するみたいですが、最終的にはクロネコヤマトじゃないとダメだと思います。
日本郵便のノウハウじゃ役不足でしょう。
で、この「メールオーダー専用調剤工場」のすぐそばに(というか、バックヤードに隣接して、医薬品卸のセンターを誘致)
その卸さんにレセコンデータを専用回線で送信して、自動発注と自動納品を可能にする。配送は隣なので3時間に1回。24時間稼動で1日8回配送。しかも支払いは消化払い制にして、在庫消化分のみを支払っていく。これで在庫削減と在庫発注業務の軽減、キャッシュフローの改善を図る。
次にレセコン入力とメインの機能、調剤。
まず、処方せんをスキャナーでスキャンして保存。QRコード付ならそれで入力も完了。QRコードがないものや、何らかの修正が必要なものは、手入力になるので、専用回線で中国の大連にデータ送信。そこでレセコン入力をアウトソーシング。(24時間体制)
併せてコールセンター業務やレセプト業務も大連に委託。
中国沿岸部に人件費もかなり上昇してきましたが、それでも日本よりは安いです。今、規模の大きな通販会社は手書きのデータ入力業務をほとんど大連にアウトソースしてます。
決済編)入力が済んだ段階で患者に対する請求額が確定するので、決済画面を患者の指定アドレス(携帯、PC)に送信。決済はクレジットカードかpaypalのみ。これで未払い問題を未然に防げます。ついでに僕ならVISAと提携して日本調剤(JP)カード!?を作っちゃいます。これは将来的な金融事業への布石でもあります。
調剤編)入力が完了した段階でレセコンから水剤、散薬監査システム、ATC、ヒート、それぞれの調剤機器にデータを飛ばし自動調剤開始。他、自動薬袋発行機、薬情、手帳シール発行、患者の住所宛先が印字された専用パッケージの発行。
今、ヒートの調剤も自動でできるのでかなり効率化ができます。
機械にできない部分のみ薬剤師を配置。
次に監査ですが、これはもう人力しかないですね。1日用量や相互作用や禁忌などは機械が補助的に助けてくれますが・・・。
監査台で普通に監査。それでその状態を高画素のカメラで撮影。プリントアウトとデータ保存。(この作業は、後からこの薬が入っていなかったとかというクレームに対応するための証拠ですね)
プリントアウトしたものは、患者に薬と一緒に送付。
パッケージングが済んだら、監査台に併設されたバックヤード後方の出荷場まで続くコンベアに乗せる。出荷場では卸さんと同じく誘致してある宅配業者がパッケージを集荷。クレジット決済の確認できたものだけを出荷OKにして、(1日6回集荷)日本全国24時間以内にお届け。この出荷確認と集荷仕分け作業はクロネコヤマトのスタッフに常駐してもらって行うと人件費も省けて理想的ですね。
まあ、以上のような流れですね。
これで、月間30万枚くらいの処方せんを捌けるのではないでしょうか?
自社(調剤薬局)にロジスティックス(クロネコヤマト)、データ入力センター(中国の大連)、決済(クレジットカード会社、paypal)、コールセンター(最初の受付は外注、内容により自社の薬剤師に転送)をうまく取り込んで、あたかもひとつの会社のように機能させます。考えただけでもワクワクしますね。
ところで、このビジネスネスモデルの問題点をいくつか考えました。
1、そもそも厚生労働省がGOサインを出すか?既存店舗でのメールオーダーサービスでさえ渋っているので、僕の考えるコンセプトではちょっと難しいかもしれません。
2、正直、処方せんの不備が多いので、疑義照会をどうするか?
24時間稼動できても、疑義照会できるのは昼間だけ。
また、門前ではないので、何をどこまで疑義照会するかの定義が大変。⇒それほど今の処方せんは不備だらけということですね。
3、保険証や受給者証の確認をどうするか?コピーを送ってもらうか?
3、24時間体制で夜勤勤務の薬剤師の確保。月間30万枚なら
1日最低250人くらいの薬剤師が必要ですね。
4、処方せんの有効期限が4日なので、受け付けた時点で期限切れになっているケースをどうするか?
こんな感じですかね~。
でもやる価値のあるビジネスモデルだと思います。
月間30万枚と予想しましたが、実際は同じ前提条件で100万枚は捌けると思います。というのは、調剤薬局業務の中で最も費用対効果の悪い工程は、投薬と薬歴書きです。その部分を省いたビジネスモデルなので、通常の3倍以上の効率が生まれると思います。ただ、処方せん40枚あたり薬剤師1名という足枷が問題なんですが・・・。
ただ、これが一般的になると既存の門前薬局への影響は甚大になると思います。特に都市部のITリテラシーの高い属性の患者を多く顧客層に抱える薬局にとっては深刻な影響が出そうですね。
逆にこのサービスの恩恵を是非受けて欲しい、交通の便が不便な地方にお住まいのお年寄りの方にはほとんど受け入れてもらえないと思います。田舎は人間関係のつながりも強いですしね。まあ、こんな感じですかね。