医療財政が悪化している昨今、調剤薬局の技術料がよく槍玉に上げられますね。そもそも医薬分業は必要なかったとか、調剤薬局で薬もらうだけでどうして技術料が発生するのか?などです。
この話を展開させる前にある寓話をご紹介します。
確かロバート・アレンさんの著書で拝見したと記憶してます。大筋の内容はこんな感じです。
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ある工場のプラント設備が壊れました。
どうしても、工場長は機械の修理ができず、専門の技術者を呼ぶことになりました。
そして、技術者はひとしきりプラント設備を見て回り、ある一ヶ所をハンマーで強く叩きました。すると見事に機械は修理され、プラントは無事稼動を始めました。喜んだ工場長は技術者に
「ありがとう。こんなに簡単に直るとは思わなかった。で、修理代はいくら?」
技術者は少し考えて
「1000ドル」と答えました。
工場長は驚いて
「ハンマーで1回叩いて、どうして1000ドルもするんだ!!1000ドルの詳細な内訳を出してくれ!!」と怒鳴りました。
技術者は涼しい顔で
「ハイ、コレです。」と内訳書を工場長に提出しました。
そこには、
請求書内訳
悪い箇所の特定費用 990ドル
ハンマーで叩き代 10ドル
合計 1000ドル
と書いてありました。
皆さん、どう思われましたか?
ボクは調剤薬局の技術料はこの1000ドルに似ていると思います。
実際、棚から薬を出して袋に詰める作業だけを見て、薬局の技術料は高いと不平を言ってる人はまさにこの寓話の工場長と同じですね。
薬剤師ならわかると思いますが、あの仕事素人には到底できませんよ。薬を棚から出して正確に薬袋に入れることすら無理だと思います。
まず、処方せん自体も読めないと思うんですよ。
先日、うちの薬局の在庫数数えたら1000種類超えてました。
もし、奇跡的に処方せんが読めたとして、1000種類の薬を間違うことなく、素人が薬袋にいれること可能だとは到底思えませんね。
たったこれだけのことでも難しい作業なんです。
1000メニューある居酒屋だったらちょっとミスしても客にはわからないと思いますが、薬はそうはいかない。1錠でも数が合ってなければそれで過誤。ましてや違う薬が入っていたらヤバイ。
加えて、もっと大変なのは、作用機序、併用禁忌や相互作用、薬物代謝の知識があってはじめて成り立つ仕事だということです。
調剤薬局経営者の立場でさらに言わせてもらうと、薬局を作るって結構大変なんですよ。
気難しいドクターへの対応、重箱の隅をつつくような監督官庁への対応、設備投資、薬剤師の確保、過剰な薬剤の在庫、どれをとってもリスクを抱えたビジネスなんです。
気軽に儲かるビジネスだと思うのであれば一度やってみるといいですよ。薬剤師でなくても調剤薬局は開設できますんで。
ボクは正直、調剤薬局の技術料は安すぎると思います。決してポジショントークではありません。だいたい調剤薬局の技術料って医科と1桁違うんです。もちろんお医者さんはすごい知識と経験のバックグラウンドを持っているので、技術料が高くてもいいんです。でも、ちょっと調剤料はそれに比べて安すぎませんか?ということです。
調剤薬局の技術料に批判的な人は、ハンマーで叩くだけで1000ドルが高いと思ってる人でしょうね。ハンマーで叩くところしか、見えてないから。その作業の背景にあるものを理解して欲しいですね。インテリジェンスフィーに対して理解が乏しい日本人の悪いところです。